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ミニマリストになってから物理的、精神的、経済的に無駄を削り続け、さらに資産形成を始めたことで一層お金の節約、倹約にいそしむ日々。そんな炭鉱夫ばりに削掘作業に没頭する中であっても、「読書の時間を確保して心に栄養を…」と思ったのは暮らしに、精神的に豊かさを欲していたから。しかし向かった先は本屋さんではなく図書館というあたり、なんだか貧しい気も…。
そこで好きな作家さんの棚を物色していた時に目に飛び込んできたのが今回の主役、『お金の減らし方』(森博嗣著)。※下のお名前はひろしと読みます。私は読めませんでした…。
正直思いました。「増やし方教えてよ」と。
しかし、何を隠そう私は森先生のファン。むしろこの本を知らなかったことに切腹すべきですが、一旦わたしのお腹は脇に置いておきましょう。
率直に申しまして、おもしろかったです。
自己啓発やハウツー本ではなく、森先生の独特な価値観に触れられる興味深い一冊です。お金との付き合い方について、考えさせられること、参考になること、気付かされることの多いこと多いこと。
今回は、お金のと付き合い方や距離感、幸せや豊かさについて、本書より学んだことを皆さんに共有していきます。
結論から申しますと、「主観を大切に」「楽しいことにはお金を使う」「自分を育てる」の3要素が大切です。
では詳しく説明してきましょう。暮らしの豊かさについて考え続けているミニマリストが抜粋、抽出した、『森博嗣流・幸せの方程式』をとくとご覧あれ。
※広告が入っています。読みづらい箇所があるかもしれません・・・。
お金は楽しみとの交換手段
そもそもお金とはなんでしょう。
森氏は、楽しみとの交換手段である、と述べています。
好きなわけでもない労働をして、その対価として受け取るお金。もちろん、生きていくための食料や家賃にもあてられますが、それは本質ではありません。生きていくだけなら、生活保護とか自給自足するなどで事足ります。
わたし達は、何か楽しいことをしたいから、お金を稼ぐ必要があるのです。
そしてお金は仮の価値に過ぎないと、森氏は続けて述べています。楽しみへ交換しない限り、お金自体には意味がないということです。
一方私は、お金は持っているだけでも価値があると思っています。使わなくてもお金があれば心の平穏を得られたり、やりたいと思ったことはいつでもできると思える。その自由さと可能性に価値があります。
そして少し考えてみると、私の考えは森氏のものと対立しないことが分かります。私は、お金の仮の価値という状態を可能性と考え、いつか楽しみに交換できることに喜び、自由を感じているわけですから。
楽しみとはなにか
では、せっせと働いて得たお金を楽しみに交換していこうではありませんか。
しかしここでいったん考えていただきたいことがあります。あなたの楽しみとは何ですか?
森氏いわく、楽しい、というのは自分の主観であることが重要であり、他者に影響されてはいけません。
他者に影響される具体例を挙げてみましょう。
SNS映えを優先してレストランを決める。
もてそうだし友達もやってるからテニスを始める。
周りの人より良い車を買う。
もし私が主観でお金と楽しいことを交換するなら、焼き肉に行きたいし、登山してみたいし、中古の日産フィガロを買いたいです。
まったく他者から影響を受けない、なんてことは難しいです。SNSは今や私たちの暮らしにしっかり馴染んでいます。他者の意見はどんどん耳に入るし、他者と比較すること、他者の価値観と自分のとを混同することも増えてきたように感じます。
そんな私たちには、「欲しい」「やりたい」という感情が本当に自分の主観であるのか、一度立ち止まって考える時間が必要なのかもしれません。
ひとつ私の悩みを聞いてください。私の趣味に英語学習とファッションがあります。好きな映画や本を原文で楽しめたり、好きな格好をして出かけるのが楽しいのですが、どちらも他者の存在が不可欠なのです。英語は意思疎通のため、服も社会的に必要なもの。これらは他者がいないと楽しめない趣味と言えなくもありません…。この文章を書きながら、「私の趣味は他者に依存したものなのでは?」と不安になってきました。私はどちらも『主観で』好きだと言えるので楽しんでいますが、少しひっかかっています。
話を戻しますと、主観を大切にして、お金を正しく楽しいことに交換して、暮らしをどんどん楽しくしていけたらいいな、ということです。私と一緒に頑張りましょう。
楽しみに使うお金の上限
「よし分かった!おれの主観はロレックスの腕時計を買えと言っている!全財産はたいて買ってくるよ」となる方も何人かいるでしょうから、森氏のお金に関する考えをもうひとつ共有しておきましょう。
森氏は楽しみに使うお金に上限を設けていました。給料の1割、これだけです。これを防衛費と呼び、自分の楽しみとの交換に足りなければ貯まるまで待ってから使っていたそうです。
この防衛費。日々の暮らしで家賃の支払いや食費、子供たちの学費などを工面する森氏が、自分の楽しみを確保、守るために設けた基準なんだとか。
また森氏は、必要だからという理由では買い物をしないそうです。
必要だと思ったとして、今までそれ無しで暮らしてこれたんだから要らないんじゃないですか?ということだそうで、『足るを知る』にも通じ、ミニマリスト諸兄も暮らしに取り入れることを一考する価値のある思考ではないでしょうか。
必要なものではなく欲しいものを買う。楽しいことにお金を使うことは、自分を大切にすること、幸せになることにも通じていそうです。
※森氏の欲しいものは鉄道模型やブリキのおもちゃなどが多く、ついにはお金を貯めて実際に人が乗って走ることができる模型とレールを自宅の庭に設置したそうです。好きを突き詰めるのって本当に楽しそう。
種まきと実体験
次に、本書で特に印象的だったエピソードを紹介いたします。
畑に種をまいたら豊作になった。それを見て「種をまいただけなのにずるい」と文句を言う人がいる。しかしその人は、土を耕し、種をまくだけで豊かに実る土壌になるようにと懸命な努力があったことを知らない。
ここで著者が伝えたかったことは、自分という土壌を耕すことで、楽しみを増幅させることができるということです。
私は読書が好きで、小さい頃から色々と読んできました。
本の中には様々なものが登場します。建築、音楽、お酒、珈琲、外国。それら全てが魅力的で、今の私の楽しみの源泉になっています。
京都に行けば「この寺の建築様式は○○で説明されていたな」とじっくり鑑賞できるし、部屋のインテリアを考える時には「○○みたいな雰囲気にしてみたい」と具体的なイメージがいくらでも湧いてきます。ウイスキーを飲むときには村上春樹を思い出し悦に浸り、英語の勉強はハリーポッターを教材にすることで楽しく続けられています。
本を読むことで耕された私の心は、様々な場面で私を楽しませてくれます。暮らしのいたるところに添えられた彩りは、さながら種をまいた後、みずみずしい新芽が一斉に芽吹く情景を想起させます。
実り豊かな土壌を耕すためには、もしかしたら初期投資が必要かもしれません。
音楽や芸術への造詣を深めたり料理を練習したり。英会話を習ったり大学に入り直したり。
最初に投資しておけば、あとは小さな種をまくだけで楽しみが生まれ続けます。
定期的にお金を払って色々楽しむのも、楽しいことのひとつの形でしょう。しかしこれは薪をくべ続けて火を絶やさないようにするようなもので、どこかしんどそう。
自分をしっかり育てるために時間とお金を使うことが、かえって楽しみに必要なお金は少なく、またお金への執着もなくなり、豊かな楽しい暮らしになるのではないでしょうか。
究極的には、精神活動のみの趣味ならお金を一切かけずに楽しむこともできますよね。しかしこれも、知識や経験などの蓄積がなければ難しい。まずは土壌を耕すところからですね。
むすび
楽しいことにお金を使うことを惜しまない。主観を明確に。自分という土を耕し、楽しみの種を蒔き育てていく。これが最小限のお金で自分を幸せにすることに繋がるのではないでしょうか。
ミニマリスト系インフルエンサーはよく「お金をかけなくても楽しめる」と発信していますが、それは本質じゃない。まず楽しめるだけの器を作り、本当に自分が楽しめるものを見つけ出し、それだけにお金を使う。その結果、楽しむことに必ずしもお金はかからないという状態になるのです。
ミニマリズムとは、無駄を削ぎ落すことで本当に自分に必要なものに気付き、それだけに囲まれることで豊かになることができる、といった考えだと解釈しています。
本書は、そんなミニマリズムと親和性の高い内容でした。私のつたない言葉でどれほど皆さんのお役に立てたか分かりませんが、皆さんの暮らしがよりいっそう素敵なものになるきっかけになりましたら幸いです。
おわり