少ない着物で着回す

ミニマルな着物

着物を着るようになってからもうすぐ丸3年経ちます。大学で言えば就活で疲弊しているころでしょうか。看護師なので一般的な感覚は分かりません。大変なんだな、とだけ周囲の友人を見て感じていました。

それだけ長く何かを続けた経験はあまりありません。今や着物は私の生活にすっかり馴染んでおり、腕を伸ばすときにはもう片方の手を添えずにはいられない、やっかいかつ少しだけ誇らしい癖もついてしまいました。昔は気にしていた着物で○○をする、△△に行くといったお題も、特に気にならなくなっています。スーツの仕立ての注文に着物で行くくらいですから。

今回は、着物が日常の一部になっている私が、衣服を着ることに必ずついて回るコーディネート、それを楽しむコツについて述べていこうと思います。そんなつもりではありませんでしたが、きっと着回しに悩む初心者さんの参考になる経験もあるかと思いますので、是非お付き合いください。

結論、ご本人が満足していれば、着回すことは意識しなくてもいいと思います

※広告が入っています。読みづらい箇所があるかもしれません・・・。

着物を増やしても着回し上手にはならない

(一般的な人の)洋服と違い、着物はシーズン毎で買い替えたり流行に左右されないもの。当然、寒い季節になれば昨年と同じ、暖かいものを着ることになります。寒さもしばらくは続きますから、暖かい恰好をする回数も増えるでしょう。着物を着始めたばかりの頃はミニマリストではありませんでしたから、毎回違う服装にすることを使命だと考えていました手数の多さを示すことがお洒落なんだと。すると困るのが手持ちの着物や羽織の数の少なさ。どれだけ見つめていても、着物が増えることもなければ羽織の色が変わることもありません。「来週もまた紺色の着物を着るのか」と、罪のない衣服にため息をつく始末。

半襟や帯を変えたり、襦袢を省いた浴衣スタイルにしたり。涙ぐましい努力をしておりました。

 

簡単な解決策はアイテムを増やすこと。幸い、古着から着物の門を叩いた私ですから、手ごろな着物を着々と増やしていくことが出来ました。ただ手数を増やすだけならば、この話はもう切り上げてもよさそうです。しかしそれでは、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」と同じこと。なかなか着物を手に入れられない環境の方が今読んでいらっしゃる。ならば他の方法をお伝えしなくてはいけません。

 

ミニマリストとして伝えるならば、ファッションを楽しむために多量の服は必要ありません。より具体的には、間に合わせの2軍の服はいくらあっても心から満足はできないので必要ないということです。微妙に丈の足りない着物を着たり、特に好きじゃない色の帯を着回しのために締めたりするのは楽しくありません。着回しするべきというどこから来たのか分からない気分を優先して、安いとはいえお金を払い、自分の時間をそんなものを着ることに使う。結局着なくなる、手放すことになるのに。経験者が言うのだから間違いありません。

 

着回し、という言葉も曖昧ですよね。誰のために着まわすのか。自分のためです。ここを他者と混同してしまいがち。私が、新鮮な気持ちでお気に入りの1着を着続けるために、着回しという技があるんだと思っています。やりたい時にだけ、練りに練った技を披露するのが楽しむポイントです。

 

では実際に、私はお気に入りだけでどのような着回しをしているのかご紹介していきましょう。

 

着物一枚帯三枚は難しい

派手な着物の着回し

まずはこちら。

明るい水色で裾に大きな葉っぱの柄があしらわれた派手な着物の着回し。

  • 羽織を変える
  • 帯を変える
  • 小物を追加する(サングラス、手袋)
  • 半襟を変える
  • 足袋を変える

黒い羽織のコーデでは、帯や小物もダークトーンでまとめ、サングラスでさらにダークな雰囲気にしていますね。主役は着物といった感じ。

真ん中のコーデでは白い羽織で雰囲気を変え、派手な帯で着物の印象を分散。そこに手袋で明るいコーデを1点引き締めています。

右のコーデは羽織と帯の色を合わせていますね。黒羽織の時と同じ、着物を主役にする魂胆です。

 

半襟や足袋の色柄にも意味を持たせて遊んでいますが、全体を俯瞰すると大きな影響を与えてないことが分かります。木を見て森を見ず、ですね。羽織の影響が大きく、小物は羽織を補完するような役割ということが分かります。

 

仮に羽織は変えずに帯だけ変えた場合、恐らく着物の主張にかき消されて本人にしか分からない着回しになるでしょう。間違い探しコーデですね。

 

派手な着物は主張が強く、着まわすには羽織や着物自体を変える必要がある、難しいアイテムと言えるでしょう。

 

地味な着物の着回し

お次はこちら。

紺色の無地着物。洋服で言うユニクロ、着回しやすいシンプルな衣服。全コーデで同じ羽織を使っています。着回しポイントは、

  • 帯を変える。
  • 半襟を変える。
  • 足袋、履き物を変える。
  • 小物を追加する。

左の2枚は帯も同じ。それでも印象が違うのはサングラスによるのもあるけれど、半襟と足元の違いが大きいです。それぞれ黒と白で小物を揃えたことで大きく印象が変わっています。

3枚目では帯が変化。こちらも帯と半襟、足元をダークトーンでまとめて変えているので印象が変わりますね。

4枚目ではスカーフに靴、派手帯で反則級の緩急です。

 

先ほどの主張の激しい着物と比較して、こちらの素朴な着物では小物だけでも十分着まわせる印象です。これなら洋服に使っていたスカーフやマフラー、靴などの小物だけで新鮮なコーデを作ることが出来そうです。

 

落ち着いた着物なら、帯や小物といった小さな力で印象をコントロールすることができる、着回しに適した着物と言えます。

 

概念としての着回し

実際のコーデを見つつあれこれと話してきましたが、派手な着物は着回しが難しいから、ユニクロみたいな落ち着いた着物を着よう。そう主張したいわけではありません。

 

このコーデは外見は違いますが、どれも同じ気分、季節をイメージして組んだもの。意図して着まわしたわけではありません。

 

冬から春に変化していく空気を、雪、雪解け水、芽吹く植物や花といったイメージを色に落とし込む。つまり概念でコーデを組んだだけ。着まわせているのはおまけです。

 

もちろん、着物の数が初心者さんより多いのは確か。私はパンもあればケーキもある、マリーアントワネット状態です。しかし、私がここでお伝えしたいのは手数の多さではありません。

 

見た目を変えることより、自分が着たい服、なりたい雰囲気、表現したい気分を作ることがコーディネートだと思います。日々気分は変わるもの。ならばその日作るコーデも前回と見た目は一緒でも、自分にとっては新しい何か、楽しめる要素があるはず。

 

たくさんの着物があっても、着まわしやすい着物と帯数本でミニマルにコーデしても、ただの作業になれば着回し「業務」です。

 

それよりも、季節の変化で気分を変える、着物に合わせたことのない大好きな小物を合わせてみる。そういう気持ちの潤い、つまり自己満足が、着回しコーデ術の極意なんじゃないかと、愚考する次第です。

 

結び

相手に色んな着姿を見せてあげたい。例えば着物旅行で二日目の写真に初日と同じコーデでは少し味気ない、と感じるような相手への配慮。そんな着回しは素敵だと思います。

 

是非皆さんは、ご友人や周りの方だけでなく、ご自身のことも思いやって日々の装いを楽しんであげてください。素敵な時間を過ごせますように。

 

おまけ

私がよくやる概念コーデは、好きな映画やアニメ、漫画の登場人物や世界観。椎名林檎さん。そして季節の移ろい、変わりゆく自然がモチーフになることが多いです。

 

私は博識ではないので、肌で感じる時間の経過をうまく言語化できず、季節の刻々とした変化をとらえることができません。なので、よく日本の暦や旬、季節について触れている本を指針にして、頭の中のもやもやを吐き出しています。


 

個人的に、草花について興味があるので、もう少し勉強しようと思っています。もしおすすめがありましたらご教授ください。

 

終わり。 

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