下駄を快適に履くためのコツ

暮らしと着物

着物をこれから着ようと思っている方の多くが履くことになる下駄。私も何年も履いていますし、着物らしい雰囲気を醸し出せるので気に入って履いています。

 しかし、「夏祭りで履いた時に足が痛くなった」「なんだか歩きづらい」なんて感じたことはありませんか?

 今回は、これから下駄を買おうと思っている方や、使っている中で不便さを感じている方へ向けて、着物生活歴3年の私から下駄を履く時に知っておくべきことをお伝えしていきます。これを読めば、着物初心者の頃に悩む問題を事前に解決することができるでしょう。どうぞお付き合いください。

※広告が入っています。読みづらい箇所があるかもしれません。どうかご容赦ください・・・。

そもそも下駄とは

 簡単に言えば木製のサンダルです。こんなやつ。


 

よく混同されるものに雪駄や草履がありますが、このふたつは木製ではありません。これらの区別は難しいので、できなくても大丈夫です。私もよくわかっていません。とりあえず今回は、下駄か、下駄以外か。それで大丈夫です。

 下駄にも色々な形があり、それによって駒下駄、右近下駄、日和下駄などと呼ばれていますが、ご自身の気に入ったデザインであればなんでも大丈夫です。下駄の魅力はなんといっても木製ゆえの質感、そして厚底によるスタイルアップ。厚底ブーツのような「盛っている感」が出ないのは、伝統に裏打ちされた下駄のシンプルな形のお陰。わざとらしくならないのがいいところです。

 夏に涼し気に見せられるのも、古今東西の中でも下駄が一番だと私は思っています。また、白木の下駄でなければ意外と夏祭り感もなく、冬の寒い空気感の中でも違和感なく履けますのでご安心を。

 では、そろそろ下駄に関する注意事項とその解決方法を述べていきましょう。

下駄のデメリット

  • アスファルトの地面で下駄の歯がどんどん削れる
  • カーペットの上を歩くと、削れた木片がついてしまう
  • 硬い床の上では足音がこつこつと響く
  • 濡れた床で滑りやすい
  • クッション性がないので疲れやすい
  • 歩きにくい(鼻緒のあるタイプすべてにあてはまる)

 
 以上が、困りごととしてよく挙げられるものでしょうか。下駄、つまり木製であることが起因しているものがほとんどです。木だから削れるし、音も鳴ればよく滑る。しかし、下駄だからこそ履きたい魅力があるのは先刻述べたとおりで、デメリットがあるからスニーカーを履くなんて本末転倒なことはしたくありませんよね。

 私は以前、雨の中美術館の展示を見に行ったことがあります。汚れてもいいように洗える木綿着物に下駄を履いていきました。完全にミスチョイスでした。
 まず、美術館のぴかぴかの床は滑る!そして静かな展示室では私が歩く度にこつこつこつこつと音が鳴ります。ピンヒールでも履いてきたのかと自問自答を繰り返し、全然展示に集中できませんでした。デメリットを知っていたら、他の草履を履いていったのに・・・。と後悔しました。

問題を解決するには

 ではここから、私の経験に基づいた問題解消の方法についてご説明していきます。アプローチとしては、鼻緒のある履き物であるということ、そして下駄つまり木製であること、の二つに絞っていきます。

専門店に相談

 これが一番手っ取り早いです。プロに相談し、お金を支払い問題を解決する。まさに時短。ミニマリスト的と言えます。

 もう少し詳しくご説明します。まず、単純に歩きにくい、足が痛くなるなどの問題は、下駄が足に合っていないことが原因のことも多いです。下駄や草履はフリーサイズと勘違いされることもありますが、足を鼻緒に引っ掛けて台座と固定する以上、その固定具合がサイズ感に直結します。この鼻緒のフィット具合をお店で調整してもらうことで、歩きにくいことによって生じていた苦痛や疲れも改善されます。下駄・草履専門店や呉服屋さんで購入した際には最初から調整してもらえますし、実際に履いてみてからも相談に乗ってくれます。購入していないお店でも調整だけしてくれるところもあります。確認してみてください。

 もう一つ、下駄が木製であるが故の問題に関しては、地面に触れる底の部分に裏張りをすることで解決できます。つまり、木をゴム底でカバーするのです。こうすれば、木が直接地面に触れることで生じるデメリットは全て解決することが出来ます。最近では、裏張り済みの下駄も売っているのでそれを選ぶのも手ですね!こちらは、普通の靴修理店でも頼むことが出来るので、一度問い合わせてみましょう。

自分で対処

 まずは自分でなんとかしたい、という方には、ご自身で下駄の底に処置をするという方法がおすすめです。

 とは言っても、裏張りを自分でするのは手間がかかります。底材を買い、形を下駄の歯に合わせて切り、接着剤で貼り付け上からトンカチで叩き圧着させる。なかなか重労働です。結局色々買い揃えるくらいなら、いっそプロに頼んだ方が経済的にも仕上がり具合もいいのではないでしょうか。

 しかし、自身でなんとかすることも可能です。私はいつもシューグーを使っています。靴の踵削れ補修に使われる絵具のようなものです。新しく買った下駄や靴の底にはまずこれを塗るのがおすすめです。底材を貼るより、ただチューブからむにゅーっと出した補修材をまんべんなく乗せていくだけなのでとても楽ちんです。


 こんな感じです。本来はナチュラルな透明の補修材だったんですが、履いているうちに汚れて見苦しいことに・・・。塗った後はこのまま1日ほど乾かせばOKです。これで2年程履いていますが、剝がれてくることもありませんでした。

 このように下駄の底をカバーすることで、歯が削れることもなければコツコツ音が鳴ることもなくなりました。滑り止めにもなるので、雨の日にも安心して履くことが出来ます。ただし見た目は美しくないので、こだわりのある方はプロに裏張りしてもらった方がいいかと思います。私は下駄底や靴の踵にはこのようにシューグーを塗っています。底の削れを防げるので靴自体が長持ちしてくれるのも嬉しいところ。


 もし鼻緒がきつくて足が痛いのであれば、原始的な方法ですが手で鼻緒をぎゅーっと引っ張ることも試す価値ありです。新品の固い鼻緒を伸ばすわけです。シンプルな方法が一番、筋肉で全て解決。

これぞ着物男子。

慣れる

 冷たく聞こえるかもしれませんが、これはすべてのことに通じます。新しくスポーツを始めれば使っていなかった筋肉が悲鳴を上げるように、革靴を新調したら革が馴染むまで足が痛くて涙が出るように・・・。もしかしたら、足が疲れるのもあなたが新しいことに挑戦している証かもしれません。下駄は確かに歩きやすい履き物ではありません。無理はしすぎず、まずは近所のお散歩から。徐々に下駄と仲良くなっていけば、歩き心地も変わってくるかもです。

 かくいう私も、下駄の履き始めは本来地面につかないはずのつま先をがしがしアスファルトに叩きつけてしまい、初代下駄はご臨終してしまった経験があります。しかし、ページの冒頭に載せた2台目の下駄では、名誉の負傷こそあれつま先のダメージはほんの少し!靴の歩き方から下駄の歩き方にシフトチェンジすることが出来たと思っています。洋服と着物で歩き方を変えられるのって、何気に凄くないですか?皆さんも、下駄の歩きづらさを楽しめるドMな精神を磨いていきましょう。

結び

 結論としまして、まずはプロに相談!自分で対処できることもあるし、時間が解決することもあるから気楽に行こう!といった感じです。

 私も数年前に6㎝ヒールのブーツを買ったことがありまして、せっかく買ったんだからと息巻いて蹴躓きながらお出掛けをたくさんしたことがあります。あの時はふくらはぎの筋肉痛がお友達でした。そのブーツは今ではお気に入り。履くたびに背筋が伸び、視点が高くなることで見える世界も変わり、なんだか自身も湧いてくる。
 
 慣れない履き物は最初は大変です。でも、きっとそこから、ほんの少しだけ新しい世界が広がっていくはずです。

 皆さんが素敵な着物生活を送れますように。

 終わり。

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