私はマルジェラの足袋シューズを3足所有していたのですが、昨年全て手放してしまいました。ラインも革の質感も素敵。買い取りをお願いする時も「やっぱやめます」と言いそうになりました。
なぜお気に入りの足袋シューズを手放すことになったのか。そこに至った過程と、そこで気づいた「愛用品」の条件についてつらつらと書いていきます。
結論として、ものはシンプルなデザインであればあるほど愛用しやすいと思います。もちろん独創的なデザインも素敵です。「憧れの足袋シューズを履いてみたい」「一生モノを手に入れたい」などなど、主に靴について物欲をお持ちの方の参考になれば幸いです。
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持っていた理由
普通にいい靴だから
最初は奇抜なデザインに目が行きますが、縫製や革質、くびれたシェイプや履き心地など普通に「いい靴」です。紐靴と比べてフィット感はもちろん劣りますが、品質の高い靴であることは間違いありません。サイズ感はやや大きめなので実際に足袋型の靴下を履いて試着しにいくことをおすすめします。しかし店舗でも品薄の取り寄せ待ちが日常なので、ときめいた時に買うのは止めません。
和洋兼用
足袋シューズはその独特なデザインで毎日の服装にアクセントを加えてくれるだけでなく、その着想源から当然着物との相性もいいのです。「洋服と着物、どちらにも合わせられるならお得」と考えていました。実際、洋服はモードに、着物も上品でハードな雰囲気が出るので気に入って毎日のように履いていました。
見栄
どんなに気の抜けた服を着ていても、足袋シューズを履いていれば「この人本当はお洒落なんじゃないか」と思ってもらえるという期待がなかったと言えば噓になります。
その特徴的な見た目から、感度の高いブランドを着ているとすぐに分かる、なおかつ「ブランドで選んでいない。デザインで選んでいるんだ」と胸を張って言えるのも一種の見栄だったんだと今更ながら思います。
お金持ちアピールをしたいわけではなく、ファッションという分野でインスタントに凄いと思われたかった気持ちもあったのでしょう。書いていて恥ずかしいのですが、それが事実です。
手放した理由
そんなお気に入りの足袋シューズでしたが、手放すに至ったのはちょっとした違和感からでした。結論を言えば、やっぱり普通が一番。普通の革靴、普通の草履の方が格好良く見えてきたのです。もともと何の変哲もないプレーンな服装が好きだというのもあります。
履くだけでお洒落に見えるということは、靴単体で存在感が大きいということ。そしてその存在感とはスプリットトゥから生まれる違和感。だから和洋どちらでコーディネートしてもちょっとだけ変。そのひっかかり、違和感が魅力なのですが、久しぶりに普通の靴や草履をシンプルに履いてみるとなんだかその方がしゅっとして見えるのです。調和がとれているともいえます。
牛タンをタレ+岩塩+わさび+レモン汁で食べていたのを、塩だけに変えたようなもの。シンプルな方が美味しいと再認識した瞬間です。あれ?皆さんお分かりいただけますよね??
違和感という濃い味付けを楽しめるのは短い間だけ。普通に、シンプルに、長い年月で研ぎ澄まされてきた定番。それが一番肌なじみのいい服装な気がします。
でも手放す時は本当に辛かったです。流線型で美しいくびれ、きめ細かい革質、柔らかく履き心地もよし。買い取りをしてもらうと決めてから度々手に取っては名残惜しいと眺めていました。美しい靴です。持っていて後悔はしないと思います。ただ、私がミニマリストになったから、そして違和感を許容できなかったから手放すだけ。とても素敵な品であることは間違いありません。
違和感を大切に
私がマルジェラの足袋シューズを購入したのは、良い違和感を感じたからでした。これまでの靴に対する価値観や考え方が揺らぐ感覚が、高価な靴を3足も買わせた要因のひとつ。衝動買いというやつです。私は物欲は抑えるべきと考えると同時に、ときめいたものを衝動買いするのには肯定的です。心の声に耳を傾けるのは大切だと思っています。
しかし、結局はその違和感が手放す決定的な理由になったのも事実。しっくりこないと感じるようになり、もやもやが募るのをしばらくは無視していました。そのうち食事中や仕事からの帰り道、お風呂の時間にも悶々とするようになり、「これはミニマリストにとってよくない兆候だ」と断捨離するに至りました。今はすっきりしています。毎日の服装に違和感がなくなり、満足できているから。
違和感について、こんな経験があります。
ひとつめは靴の買取を頼んだ話。特に下調べせず近いお店に査定を頼みました。査定額を確認し、特に不満はありませんでした。しかしなんだか気が進まないような気もする。しかし、せっかくここまで来たんだからと買い取ってもらった帰り道、当時行きつけの別の古着屋では買取額アップのキャンペーンをしていたことを知りました。違和感に素直に従っていればよかった・・・と後悔しても後の祭り。
ふたつめはお店の方と服を見ながら喋っていた時のこと。その時は買うつもり満々で、自分サイズの取り寄せを依頼しました。しかし、帰り道でふとなんだか純粋にわくわくできないと感じました。高価な服だったからかもしれないし、即決しすぎた判断を後悔してのことかもしれません。そこで、その場ですぐにお店に電話をかけキャンセルしてもらうことに。申し訳ないとも思いつつ、すぐに心が晴れやかになるのを感じました。知らないうちに違和感が胸の内に充満していたのです。きっと心が警報を鳴らしていたのでしょう。その後、その服を買わなかったことを後悔することは一瞬もありませんでした。
何が言いたいかというと、どんな理由や理屈を並べても、違和感を感じたらまずは逃げる、やめるのが大切だということです。どれだけ素敵な服や靴でも、せっかくここまで来たんだからと自分を納得させようとしても、感覚が訴えていることを信じてあげた方が結果的に良い方向に転ぶことが多い気がします。仕事にも暮らしにも、断捨離などにも当てはまる、大切な感覚です。
結び
違和感とはこれまでの経験の蓄積から来る直感です。ただの気のせいだと一蹴するのは簡単ですが、その違和感は問題を解決するまで消えないかもしれません。皆さんの大切な時間、100%楽しめないのはもったいない。それに、心の声に耳を傾けることで防げる失敗もあれば、暮らしを良くすることもできるかもしれません。
そして、本当に長く愛用できるものは、違和感のない、暮らしに馴染むものだと思います。派手な色使いの絵画には惹きつけられますし、濃厚な甘い香りは大好きです。しかし、それらが常にそばにある状態はきっと落ち着きません。違和感があるから。自然体で高品質、少しつまらないと感じるくらいがちょうどいいのかもしれません。
皆さんも愛用品に囲まれながら、心の声を大切にお過ごしください。
おまけ~私の愛用品紹介~
ローファー/パラブーツ
フランスで生まれた、オイルを染み込ませた革を使ったローファー。丸っこい形と厚底ヒールがなんだか可愛らしくもあり、無骨な印象もあります。革靴なのに雨に強く、気を遣わずにがしがし履けるのも魅力。4年程履き込んだことでついた傷や皺がいい味出してます。シンプルだからこそ、経年変化がはっきりと感じ取れる良い品です。定番な型だからこそ飽きません。
靴屋さんで新品を出してもらった時に表面全体が白くなっていてびっくりしました。オイルレザーに起きる現象で履いていれば消えます。カビではないのでご安心を。
サイドゴアブーツ/ドクターマーチン
皆さん一度は足を入れたことがあるであろうドクターマーチン。その紐無しブーツ。私はステッチが黒の地味なデザインのものを愛用しています。この子もシンプルでプレーンなデザイン。ソールが秀逸で本当に歩きやすいです。そして全然ソールが削れず減っていかない。革の加工のお陰か手入れすると新品みたいに綺麗に戻っちゃってなんだか物足りません。パラブーツみたいに味を出したいのですが・・・。丈夫なのはいいことです。飽きるのが先か壊れるのが先か。どちらも起きる気がしません。
ホールカット/三陽山長
最後は日本産の革靴。一枚革で作られたつなぎ目のないミニマムなデザイン。なにもないことが特徴な靴です。実は最近まで大切にし過ぎて普段使いできていなかったのですが、靴の断捨離をしたことで普段の暮らしに取り入れることができました。上の二つのようにがしがし履けるタフな靴ではありませんが、やっぱり紐靴は格好いいです。
この靴は私が初めて出会った、一切靴擦れが起きなかった靴でもあります。気に入ってもう一型を冠婚葬祭用に所有しているのですが、そちらも靴擦れとは無縁。日本人の足型に合うのでしょう。皆さんにも是非一度試してほしいです。
終わり