着物に革靴を合わせてみる

着こなし

 わたしは、着物を着て暮らしているミニマリストです。しかし、革靴を6足も所有しています。スーツを着るような仕事をしているわけでもないのに、です。

 わたしは洋服を通勤でしか着ませんし、職場ではスニーカーに履き替えます。なのに革靴が6足…。持ちすぎです。人の足の数には上限があるのですから、たくさん靴を持っていても、いえ持っているせいで、それぞれを履ける回数は少なくなってしまう。無駄を嫌うミニマリストとしては、数足手放すのが妥当なところ。しかし、手放すつもりはございません!絶対に!(だって革靴好きなんですもん)

 かたや、着物用の履き物は、草履と下駄がひとつずつ。それだけです。着物で暮らしているにも関わらず、いえミニマリストとしては妥当な数といえるでのでしょうか。冬にはブーツも履きますが、ほとんど草履ひとつをずっと使い続けています。そこでふと考えました。履いていない革靴がたくさんあるのなら、着物を着ている時にも革靴を履けばいいんじゃないかと。


 しかし、着物に革靴を合わせるのは不自然なんじゃ?という思いが、着物生活6年目を迎えてる頭をもたげます。だって革靴は本来、スーツなどの西洋の正装で履くもの。一方着物は、現代日本では礼装と位置付けられている、堅苦しい雰囲気のある衣服です。そんな、いわば水と油のようなものを「使わないのはもったいないから、組み合わせちゃおう」なんて。ぱっと思いつてはみたものの、なかなかに頭の痛い問題です。本日は、そんな着物と革靴のコーディネートについて、私がうだうだ悩んでいく様子をご覧にいれようと思います。

  • 着物と革靴のコーデに悩んでいる方
  • 草履で歩くと足が痛くなるからと、他の履き物を探している方
  • ミニマリストが厳選した革靴を見たい方
  • ついでに革靴の管理方法について知りたい方

 こんな方々の参考になるかと思いますので、よければしばしお付き合いください。

 先に結論を申しますと、

  • どんな革靴もコーディネート次第で着物に合わせることはできるが、向き不向きはある
  • ソールのぶ厚い革靴装飾のないオペラシューズサイドゴアブーツがおすすめ
  • 色は一択

という感じです。これらの持論に至った理由や、おすすめしたい具体的なブランドについて詳しく述べていきますので、お時間の許す限り、お付き合いください。

※広告が入っています。読みづらい箇所があるかもしれません・・・。

そもそも革靴は難しい?

 みなさんは、革靴といえばどんなものを想像しますか?

 きっと、こんな感じですよね。いわゆるレースアップの短靴です。そして、何を隠そうこの私は、着物×革靴に苦手意識を持っています。具体的に「○○だから着物に革靴を合わせたくないんだ!」なんて主義主張はありません。なんて言えばいいんでしょう。ただ、ゆったりした着物にきりっとした革靴を合わせると、足元が急にきゅっと縮んだような印象を抱きがち。その違和感が、なんとなく苦手。細い足に大きな靴を履いてるミッキーは可愛らしいと思うんですけど、その逆はなんだか・・・。着物姿の中で、足元だけ浮いてしまうというか・・・。

 なかなかうまく表現できません。もう少し、この苦手意識について言語化できないか試みてみましょう。


 普通の着物姿の場合、着物の裾から足袋に包まれた足がにょきっと出て、草履からも足は剥き出しです。足首からつま先までラインが断絶することなく、足袋が足にぴたりと張り付いていることもあり、スリムで流れるようなシルエットになります。

 では、革靴を履いた場合はどんなシルエットになるのでしょうか。

 着物の裾から足首がちらっと見えて、すぐに靴になります。裾、足首、靴でシルエットが分断されているということです。『着物に靴を合わせている』というのも分断を強調し、結果として足元に視線が止まるようなポイントが生まれています。本来であれば流れるような細身のシルエットであるはずの足元に、流れを止めるように革靴が鎮座している。これが違和感となり、着物×革靴を難しくしています。靴の形だけではなく、革の艶や色、靴紐やステッチなどの意匠が、いっそうシルエットの違和感を強調していることも、知っておくべきでしょう。

 普通の着物姿と異なるシルエットの違和感とどう向き合っていくかが、着物×革靴のポイントになりそうです。

革靴の『型』で考えてみる

足元のシルエットを整える

 さきほど、着物に革靴を合わせると足元のシルエットが気になってしまう、とお伝えしました。でも、そんなの草履じゃないものを着物で履くなら避けようがないですよね。シルエットの違和感と、いったいどう向き合えばいいのでしょうか。

 きっと、違和感を隠すか、活かすか。この2択になるのではないでしょうか。違和感を活かすという手段は、非常に楽しそうでファッションの醍醐味を感じますが、それではただ私個人の趣味全開の自己満足な駄文に終わってしまいそうです。着物選びや小物合わせ、TPOなども関わってくる曖昧な提案に終わってしまうことにもなりそうですので、今回こちらの道は見なかったことにしましょう


 では、革靴のシルエットの違和感を隠す方法について模索していきましょう。

 シルエットの違和感を隠す。文字通りにとらえるならば、着物の身丈を床に擦れる程長くすれば物理的に革靴を隠すことができますが、それは私含め皆さんの求める答えではないでしょう。同じように、「他に違和感のあるポイントを作れば革靴の違和感が消えるんじゃないか」と奇抜なアイテムやメイクを取り入れるのも、なんか違う感じがする。

「・・・。」

 そんな思考と煩悶と試行錯誤の海の中をバタフライし続け、ついに私はたどり着きました。違和感は隠すのではなく、馴染ませ目立たなくする。これが、一番合理的かつ再現性の高い解決策なのではないでしょうか。そして、革靴のシルエットの違和感を目立たなくさせるためには、普通の着物姿の足元にシルエットを近づけるのが得策です。シルエットが似通っていれば、自然と気にならなくなるのではないでしょうか。

 では、革靴のシルエットを着物の足元に近づけるためには、具体的にどのようなステップを踏めばいいのでしょうか。わたしが思うに、

  1. 着物の足元、つまり足袋×草履のシルエットを明確にする
  2. そのシルエットの要素を持った革靴の型を見つける

この2つのアプローチが必要です。


 では、まずは写真で確認しながら、足袋×草履のシルエットの特徴を探してみましょう。

 みなさん、何かお気づきになりましたでしょうか。

「ずばり、上は細く下はごついということでしょう~!」

こんな丸尾君は嫌です。

 ふざけるのはやめて、きちんと説明させていただきます。 

 写真を眺めてみると、足自体はスリムで切れ目のないシルエットになっています。一方、足の下敷きになっている草履の台(足をのせる部分)は大きく張り出しています。このことから、上は細く下は大きなシルエットが、着物の足元、つまり足袋×草履の特徴のひとつと言えそうです。着物はゆったりとした布で身体を包む衣服ですから、土台となる足元にはある程度ボリュームがある方がバランスがいいのでしょう。ただ、全てがボリューム満点というわけではなく、むき出しとなっている足袋のスリムな部分があることで、着姿全体に引き締まった印象を与えているのも特徴的です。

 つまり、革靴ならばアッパーは足に吸い付くような細身なもので、ソールは分厚くコバが張り出したものが、足袋×草履のシルエットの特徴を備えた一足と言えるでしょう。
アッパーとは足を包んでいる革の部分(靴の顔のような部分ですね)。ソールは地面に触れる下の部分。コバはアッパーとソールの繋ぎ目から出っ張った部分のこと。

おすすめの革靴

 着物に革靴を合わたことで生まれる『足元のシルエットの違和感』が苦手で、それを目立たなくすることで着物×革靴を楽しめるようになる。そんな考えから、ここまで着物に合う革靴の型について考察してきました。では、ここからはファッション狂いで革靴オタクという一面もある私の独断と偏見も交え、考察した着物に合うシルエットの革靴を具体的に紹介していきます。

Tricker’s/トリッカーズ

  • アッパーのスリムさ:★★★☆☆
  • ソールの厚さ   :★★★★☆
  • コバの張り出し  :★★★★☆
  • 格好良さ     :★★★★★

 着物に合う革靴の条件に合い、なおかつ革靴好きの私が皆さんにおすすめできる革靴としてすぐに頭に浮かんだのが、英国王室御用達のトリッカーズ

 貴族が狩猟用に使っていた歴史があることから、雨や悪路にも対応できるタフな要素と、品のある美しいラインを兼ね備えています。装飾的なメダリオンも美しく、厚いソールとせり出したコバのシルエットが唯一無二です。色は黒だけなじゃく焦げ茶色もおすすめですし、一番人気で有名なライトブラウンも一見の価値あり。
 イギリス靴らしい無骨さと美しいシルエット、そして上等な革が使われることで生まれる風格。まさに『質実剛健』な格好良さがにじみ出ているブランドです。 

Paraboot/パラブーツ  

  • アッパーのスリムさ:★★☆☆☆
  • ソールの厚さ   :★★★★☆
  • コバの張り出し  :★★★★★
  • 経年変化の美しさ :★★★★★
 そしてフランスのブランドのパラブーツ

 
 こちらは登山が盛んな地域で生まれた、もとは登山用の靴を作っていたブランドで、厚いソールと、オイルを染み込ませた唯一無二のレザーを使った『雨に強い靴』としても有名です。都会的なダブルモンクストラップシューズは特に形が綺麗ですが、外羽根プレーントゥやローファーなど、他の型も格好いいのでお好みの形を探してみてください。
 
 この靴はやはり、オイルを染み込ませたリスレザーが魅力的です。履くほどに馴染み革の表情が美しくなるのは革靴全般に言えますが、この革の経年変化は普通の革と一味違います。
(買った時は革の表面に白いカビのようなものが浮いていて気持ち悪いかもしれませんが、ご安心ください。それはリスレザーの証である『ブルーム』という油分や蝋分が浮き出たもので、履くと体温で温められ溶けて見えなくなります)

Dr Martens ドクターマーチン 

  • アッパーのスリムさ:★★★☆☆
  • ソールの厚さ   :★★★★☆
  • コバの張り出し  :★★★★☆
  • 実用性      :★★★★★
 お次は、知らぬ者のいないファッション界の大物、ドクターマーチン

 先に紹介したトリッカーズパラブーツと比較して圧倒的に安い!その分、シルエットの細さ・美しさなどは劣りますが、厚いソールと張り出したコバは同等かそれ以上。おなじみの黄色いステッチのものではなく、黒いステッチのシンプルなものが、格好良くておすすめです。
 
 ドクターマーチンの魅力は安さだけではありません。軽い歩き心地のエアクッションソールと、水や傷に強いコーティングされた革ゆえの使い勝手の良さこそ、ドクターマーチンが世界中で愛用されるべくして愛されている理由なのです。

オペラシューズ

  • アッパーのスリムさ:★★★★★
  • ソールの厚さ   :★☆☆☆☆
  • コバの張り出し  :★☆☆☆☆
  • シンプルさ    :★★★★★

 ここからは具体的なブランドではなく、靴の型のおすすめになります。

 着物×革靴で生じる違和感は、シルエットの違いによるものだと先ほど説明いたしました。そして、革靴のデザイン(色、艶、靴紐、ステッチなど)が違和感を助長するとも申し上げました。そうなれば当然デザインを極限までそぎ落としたオペラシューズを紹介しないわけにはいきません。

 もともと舞台観劇用の紳士用礼装として使われていたもので、非常にすっきりしたデザインです。きっちりして見える一方、リラックスしたカジュアル用としても使えるバランス感が、どんな着物にも合わせやすい万能な一足と言えるでしょう。

 おすすめしたいオペラシューズの具体的なブランドもあるのですが、スリッポンタイプの革靴はサイズ選びが難しく、革靴に慣れていない方には推奨しません。ただ、GUが本革で打ち出しているものなら安いうえに形も綺麗ですので、初めての方が試すのにちょうどいいかもしれません。※2023年8月26日現在、GUオンラインショップでオペラシューズの販売はしていませんでした・・・代わりに、試しやすい値段で形がきれいなものを見つけたので、貼っておきます。

 

サイドゴアブーツ 

  • アッパーのスリムさ:★★★☆☆
  • ソールの厚さ   :★★★★☆
  • コバの張り出し  :★★★★☆
  • 着こなしの格好良さ:★★★★★

 裾から伸びる切れ目のない足のシルエットという点で、靴紐や金具などが一切ついていないサイドゴアブーツ最も着物×革靴に適しているというのが、私の持論。しかし、これはもはや合わせやす過ぎる殿堂入りの王者ということで、あえてこれまで触れてきませんでした。

 そんな絶対王者のサイドゴアブーツの中でも、分厚く丸っこいシルエットのものがおすすめです。細身のスタイリッシュなデザインのものでは、キマリ過ぎて逆に浮いてしまう恐れがあります。ワークやミリタリー要素のあるカジュアルなシルエットの方が、着物の存在感に負けず、馴染み、いい塩梅になる、と着物生活6年の経験から感じています。

 個人的には、先ほども登場したドクターマーチンのブーツ、それもステッチが黒いやつがおすすめです。

どんな『色』の革靴がいいのか

 「なんだか小難しいことや理屈っぽいことばかり言っててつまんないなぁ」とお考えのそこのあなた!

 

 わたしも疲れてきました…。

 ご安心ください!ここからは、もっと感覚的で分かりやすいお話をしていきます。

 着物×革靴の違和感を目立たなくさせるためには、さきほど挙げた革靴じゃないといけない、なんて思わないでください。そんなことはないはずです。これまでは着物の型について考えてきましたが、お次は着物に合う革靴の色について考えていきましょう。

王道の黒

 革靴を選ぶだけなら、個人的にダークブラウンが好きです。だって革の経年変化の美しさを一番感じられるから!しかし本日のテーマである着物×革靴のコーディネイトとしては、が一番おすすめです。理由はこんな感じ。

  1. 無彩色なので色合わせに悩まない
  2. 水染みや擦れなどの汚れが目立たない
  3. 着物と黒革靴の雰囲気が合う

 特に3つ目は着物×革靴特有でしょう。着ているだけでフォーマル感が出る着物には、最もフォーマルな色であるは、まず間違いなく馴染みます。

 もちろん、お持ちの着物によっては茶革の方がコーディネートしやすいこともありますし、一見すると難易度が高いライトブラウンの革靴も、白や生成り色などの明るめな着物との相性はばっちりです。ようはコーディネート次第になりますが、着物で悪目立ちしない方法でおすすめしたダークネイビーの着物であろうと、茶色や生成り色の着物であろうと、もうどんな色の着物であろうとも、何も考えずにとりあえず合わせても格好良くなるという点で、黒革靴が一番使いやすいことは間違いないでしょう。

革質も重要 

 また、具体的に革靴を探す際のポイントとして、革質を意識することもおすすめです。

 左のエナメル靴はツヤツヤと輝き、右はローファーは光沢の弱い自然な艶が出ていますね。エナメルなどの艶の極めて強いガラスレザーは、フォーマル感が全面に押し出されており主張が強いです。同等のフォーマル度の正絹着物と合わせてめかしこむか、あえてざっくりした粗野な生地の着物と合わせて『あえて』コントラストをつけるような、振れ幅を考えて工夫しないといけない、ピーキーな革質といえます。

 なにも私は、革靴の艶はないほうがいいと言いたいわけではありません。お手持ちの着物の生地感や目指しているコーディネート、ご自身のライフスタイルに合うものを主観でお選びになればOKです。

 「そうは言っても何かしらの法則基準を示してほしい」という方のために、わたしの個人的な好みをお伝えしましょう。革靴と着物の生地感を『少しずらす』のが、適当にコーディネートしてもしっくりする秘訣です。

↑(左)艶強めな革靴には少しだけ艶のある着物。(右)控えめな艶の革靴には艶のない着物。

 考えなしに『ツヤツヤの大島紬にエナメル靴』、『節のあるマットな木綿にシボ革やスウェード靴』、なんて合わせ方をすると、決め過ぎたりラギット過ぎたりと過剰になってしまう危険性があります(素材感を合わせて雰囲気を尖らせるコーディネートは私も大好きですが・・・)。着物と革靴で少し表情の異なる組み合わせにした方が、コーディネートがこなれて見えるのです。着物でよく言われている、『染めの着物に織りの帯、織りの着物に染めの帯』と同じような感覚ということですね。

 もちろん、着物の生地感・色・丈感や、革靴のシルエット・色・艶、そして気分によって組み合わせの良し悪しは変化していきますが、初めて着物に合わせる革靴ならば、適度な艶のある中庸な革質のものを選ぶのがいいのではないでしょうか。

すでに持っている革靴を活かす

 着物に合う革靴は分かりましたが、まだ問題が残っています。それは、今持っている革靴をどうやって着物に合わせればいいのかということです。

 わざわざこんな風に文章を書いているきっかけは、「お気に入りだけど登板回数の少ない革靴を着物に合わせて活かしてあげたいと思ったからです。『細身なホールカット』や『冠婚葬祭に使えるストレートチップ』など、コーディネートがフォーマルに偏ってかしこまりすぎる、難しくも美しいお気に入りの靴たちをどうやって活かすか。ここを解き明かすことが出来れば、自分自身の悩みだけでなく、同じような悩みを持った方々の手助けができるではないか。そう考えますれば、今現在わたしが所有している革靴でもできる着物×革靴のコーディネートについて、完全なる自己満足と独断、偏見、性癖を盛り込んで、ためになるのかどうかは一旦度外視して考えていこうと思います。

ファッション全開のモード感

 まずは、黒のワントーンコーデ

 色味の統一感で生まれた格好いい雰囲気(と筆者は供述している)が、革靴の違和感に勝っています。ここまでやっちゃってると、革靴の違和感を『あえて』アクセントに使っているようなものです。着物に革靴を合わせていても問題ない空気が漂っていますね。

 次は和洋ミックス。

 違和感をあえて全面に押し出し誤魔化す力技。ただ和洋折衷するのではなく、フォーマルに全振りしたミックスは、革靴を履いていることに文句を言わせない雰囲気ばりばりです。というか、スーツなんだから革靴を履くのが自然なのに、ここまで違和感が出るのもすごい・・・。

 これらのコーデは大変楽しいのですが、みなさんの参考になるかは微妙ですね…。次にいきましょう。

同系色の小物を散らした統一感

 より現実的な提案をさせていただきます。

 革靴と同じ要素のアイテムを組み合わせて着物×革靴の違和感を薄くする、というのはどうでしょうか。

 黒のストレートチップは冠婚葬祭やビジネスで間違いないとされるTheフォーマルな靴。

 これを着物と合わせてみましょう。まずはこちらの比較を。

 ハイネックだけを組み合わせた左では革靴が目立ちますが、黒革の手袋とカバンを追加した右では、革靴は目立たず馴染んで全体的にも統一感がありますね。


 お次は茶色のホールカット。内側のくびれた流線形とつま先のメダリオンが美しいのですが、こちらもフォーマル感があり組み合わせに悩む一足。

 こちらも普通に履いたものと工夫してコーディネイトしたもので比較してみましょう。

 右の方が、茶色のカバンと茶色の持ち手の傘があることで、茶色の革靴と小物が調和し、コーディネートがまとまって見えます。着物自体も無地かつ3色以内にまとめていることで、小物たちとの親和性も高くなっています。
 

 『色は3つまで』『柄じゃなく無地』、『小物の色を合わせる』。これはどれも洋服でよく提唱されているもので、新鮮味はないかもしれません。「もっと斬新で手っ取り早い提案をしてほしかった」と思う方もいるかもしれませんね。しかし、逆に考えてみてください。ずっと言われ続けているような基本的なことをするだけで、誰でも手持ちの革靴を使いこなすことが出来るようになるんです。ちょっとわくわくしてきませんか?

結論

 着物に合わせるべき革靴とは、足に沿った細身のアッパーかつ分厚いソール、せり出したコバを兼ね備えた、艶の強すぎない黒い本革のもの。デザインはオペラシューズサイドゴアブーツなどのシンプルなものが適しているが、外羽根やダブルモンク、ウィングチップ等どんな型も、前述した要素を満たしていれば着物に合わせやすい。

というのが、私が悶々としながらたどり着いたひとつの結論です。そもそも、革靴自体はどれも素敵で格好いいのです。私なんかの意見は聞き流して、ご自身が「最高に格好いい!」と感じたものをお気に入りの着物と合わせてあげればいいと、私は感じております。磨いていない汚れた革靴、先が異常に尖った革靴、つま先が反り返ったブーツなど、身だしなみに興味のない人が履いているような靴を、なにも考えず工夫もせずに着物に合わせるから、ダサくみっともなくなるのです。

おまけ:革靴の手入れ

 最後に、これから革靴を買おうと計画している方に大切なお知らせをひとつだけ。

 革靴はスニーカーと違います!

 これだけはご承知おきください。

 …詳しく申し上げますと、履いた後に手入れしないと損します、ということです。スニーカーなら、雨の日に履いたまま放置しても問題ありませんが、革靴は手入れしないと見た目が悪くなっていきますし、靴の寿命も各段に短くなってしまいます。なんせ革ですから・・・。わたしより革靴愛が強く深いyoutuberがお手入れについて解説してらっしゃいますので、詳しくはこちらをご覧ください。

 ここで革靴のお手入れについて簡単にお伝えすると、

  1. 帰宅したらシューキーパーを革靴に入れる(履き皺を伸ばす、除湿目的)
  2. 馬毛ブラシでブラッシング(ほこりを落とす)
  3. 気が向いたら保湿クリームを塗って豚毛ブラシでブラッシング(保湿)

 こんな感じです。もっと革靴に優しく、美しい経年変化が生まれる方法は多岐にわたりひとつひとつがより深いのですが、最初はこんな感じで大丈夫です。シューキーパーがなければ新聞紙をまるめて詰めてもいいですし、馬毛ブラシも使い古したタオルで代用できます。保湿も最初から揃えなくてもいいです(私は気に入った革靴を購入したなら必ず保湿はしたい派です。革が乾燥してひび割れたら嫌なので)。

 

 

 

 

 

 

結び

 ほんとうは、もっと革靴の魅力を滔々と語る記事にしたかったのですが、なんだかハウツー記事みたいになってしまいました。
 

 草履は冬場は寒いし雨だと濡れる。一方、靴ならそんなことは起きませんし、そもそも歩きやすい。使い勝手がいいのですから、道具として当たり前に履けばいいのですよね。コーディネートとか違和感とか、自分で勝手に作り出した敵と頭の中で戦っていただけな気がしてきました。ここまでお付き合いくださり、成人男性の滑稽な姿を見守ってくれた皆様に謝辞を。

 そして、みなさんの暮らしがよりいっそう素敵なものになりますように。

おわり

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