私は着物を着始めて間もない頃、色んなことを気にしていました。「見られてる気がする」「早く歩けないから周りに迷惑かな」「どれだけ気を付けても着崩れてしまう。変じゃないかな」などなど様々な小さな悩みを抱えながら着物でお出掛けしたり観光したり。
着物を着る生活を続けて3年が経った今なら言えます。「節子。それ変やない。気にし過ぎや」と。
今回は、着物を最近着るようになった方が不安に思うあれこれを、大丈夫だよと私の体験と対策、コツを交えてお伝えしていきます。きっと、明日から着物のお出掛けがより一層楽しくなるはずです。是非お付き合いください。
※広告が入っています。読みづらい箇所があるかもしれません。どうかご容赦ください・・・。
目立つ問題
これが皆さん最初に気になるところだと思います。実際、人は一瞬視線をこちらに向けることが多いです。しかし、それだけです。私たちも、高級車が走っていたら目で追うし、美しい女性がいらっしゃれば目を奪われるでしょう。それと一緒です。心配性な方であれば、「自分が変だから視線が集まるのではないか。それが気になってしまう」とおっしゃるかもしれません。しかしみなさん、駅を歩いていれば全身ピンクの人や支援員さんが付き添っている要支援者の方、とてつもなく太っている方など様々な個性のある方を見かけるでしょう。毎度眉をしかめ、その日会う人にいちいち「○○な人がいて」と報告したり、一日その人のことを考えたりしますか?人はみんな自分のことしか見ていないのです。だから私たちも、着物を着ていることが目立つかもと不安になるのですが、誰もそこまで気にしていません。着物を着ることは悪いことではありません。好きなものを身にまとう、とても素敵なことだと思います。
それでも、どうしてもコーデが不安な方は過去のこちらの記事を参考にしてみてください。
https://blue-kimono.com/simpleisthebestaboutkimono/
見えてしまう問題
襦袢が見えてもいい
始めの頃は、探り探りで着物を着ますよね。そうすると、襦袢と着物のサイズが合わないこともあります。着物の袖から襦袢が出てしまうとか。
私は初心者の頃、京都観光をしに行ったことがあります。清水寺の周辺を散策していたところ、襦袢が袖からひょこっと顔を出していることに気づいた当時の私は「大変だ。これじゃ人前を歩けない!」と急いでトイレに駆け込みました。なんとか応急処置をして観光を再開できましたが、ずっと袖が気になって心から100%観光を楽しめなかったことを覚えています。
今なら言えます。「節子。以下略」と。そんなところ誰も気にしていません。洋服で、ジャケットやパーカーの下からシャツの袖が出ているかどうか、他人の袖口を凝視する酔狂な方にはなかなかお目にかかれないでしょう。しかし当時の私は、着物の教科書に載っていた通りの着方をしないといけないと思い込んでいました。皆様は是非、そんなどうでもいいところは気にせず、お出掛けを楽しんでくださいね。もちろん、美意識で袖を気にするのも素敵だと思います。
ついでに、私が京都で行った応急処置について簡単にご説明します。とても簡単です。襦袢が出てしまうのは袖の上側、肩線が延びたライン上の生地ですので、そのライン上のどこかを摘まんで輪ゴムで留めてしまうだけ。これだけで襦袢の袖の長さが数㎝短くなるので、着物の袖の中に納まるようになります。何故持っていたかって?お団子をパックで買って楽しんでいた最中だったからですよ!あの時は落ち着いて味わえませんでしたが・・・。
ヒートテックが見えてもいい
冬は皆さんヒートテックを着るかと思います。いえ、ヒートテックなら見えてもいいということではなくて、着物というゆったりした衣服の特性上、下に着ているものは見えるようにできているということをお伝えしたいのです。特に男性は帯を女性より下で締めるので、上半身の着物がその分遊びやすいというか、ゆとりがあるのです。そのため、胸元が開けば見えて当然。それに、長袖ならゆったりした着物の袖口から見えることもあるでしょうが、防寒としてのアンダーウェアの何がいけないのでしょうか。もちろん、見せない美学や見せるお洒落などもありますが、兎に角下着じゃないので恥ずかしくないということです。
ステテコが見えてもいい
これも上に同じです。ただ、ユニクロのエアリズムステテコをおすすめしている私ですが、風で着物の裾がはだけた時にツヤツヤテカテカしたステテコでは下着感があって少し恥ずかしいというめんどくさい美学もあるので、いわゆる「見せる下着」の感覚でお洒落なステテコを愛用しています。麻ですが、冬でも快適です。
足袋と裾の間から肌が見えてもいい
普段足は着物の裾と足袋で覆われ、見えないようになっています。しかし、歩く、階段を上る、風が吹くなどのタイミングで裾が上がって肌が見えることがあります。私は初心者の頃、それが何故か恥ずかしくてレギンスを履いて肌を覆ったりしていました。きっと、「ポニーテールから見えるうなじが好き」と同じ系統の感覚なのでしょう。見えないはずの肌が露出してしまうのが恥ずかしかったのです。
ゆとりのある衣服を着ていれば、肌が見えることはよくあります。もし、普通に立っているだけで裾と足袋の間から肌が見えている場合、着物の身丈が短いかもしれませんが個人の美意識の範疇だと思うので気にしなくて大丈夫です。気にしてしまう方は、5枚コハゼの足袋かロングホーズの足袋ソックスがおすすめです。ソックスは、ワークマンなどに安く売っています。この足袋は5枚コハゼかつ裏底が汚れの目立つ白じゃなく黒色なので格好良くておすすめです。私もこれを書いたら一足買います。
着崩れてしまう問題
これは自然の摂理。林檎が木から落ちるのと一緒です。着崩れることは悪いことではありません。その分生地にかかる圧を逃がし、縫い目のダメージを抑えてくれているのですから。決してあなたの着付けが悪いわけでも、着物が悪いわけでもありません。
歩いたら着崩れる
しかし、着崩れを放置すれば最終的には警察沙汰になってしまうので、うまく付き合っていく必要があります。常に気にする必要はありません。まずは、信号待ちなどで立ち止まった時にチェックしてください。きっと上前(着物の一番外側)の端(右太腿の前あたり)が体の中心線に寄って左へ行ってしまってるはずです。それを右手で右側にぴっと引っ張ってあげましょう。全体的な着崩れ直しは、トイレに行くタイミングで個室内でやるくらいで大丈夫でしょう。
気にし過ぎないことも大切です。しょっちゅう直すために触るとかえってよくないこともあります。着物は着崩れるもの、洋服とは違うんだということを念頭に着物を楽しみましょう。
座ったら着崩れる
これも上に同じ。座り方が悪いわけではありません。足をしっかり閉じない限り、足が開くことで裾は左右に開きます。男性であれば骨格的に足を閉じ続けることは困難です。しかし、中身が見えない限りこの着崩れは「着物という衣服のゆとり」です。おかしなことではありません。もし着崩れが気になる場合、足を組むのがおすすめです。足同士でホールドし合うので、開くことがなくなります。
しわが寄ってもいい
着物を家で着付けて鏡を見ると、帯を締めたことで腰回りにしわや布のたわみができますよね。これは100%起きます。そして、一度整えても人間が動く以上また生地が動きしわはできます。初心者だからできるのではありません。変じゃありません。歩く時の着崩れと同様に、こまめに帯と着物の間に指を入れてそっとなぜることで生地を整えるとしわはすぐに消せます。
どれだけセットした髪型も風が吹けば崩れますし、マスクをすれば化粧も落ちます。着付けだけが永久にそのままなんてことはありません。変化は自然の摂理、栄枯盛衰、着物は着崩れるものです。少し崩すくらいの方が、こなれ感が出てお洒落な雰囲気になることもあります。気にし過ぎずいきましょう。
動きづらい問題
階段は上りにくい
段差を上ろうと足を上げれば裾がつま先にひっかかります。これは着物のデメリットですが、着物のゆったりした布感、身にまとう衣服という魅力からくるものでもあります。なので、どうしてもゆっくり階段を上がることになります(慣れてくればサラリーマンを追い抜くこともできます)。しかしそれは丁寧に動いているだけのこと。あなたが着物に慣れていないせいでもなければ、のろまだということでもありません。後ろを歩く人の迷惑を考えるあなたはきっと優しい人なのでしょう。ですが、心に余裕のない人でなければ、階段をゆっくり歩く人を迷惑がったりしないものです。安心して、のんびり上りましょう。
つま先を裾に引っ掛けないコツは、右手で太腿あたりの上前の端と、そのすぐ内側にある下前の生地を2枚一緒に指でつまんで軽く上に持ち上げることです。上級者であれば、さらに身体を右肩を先にする形で階段に対して斜めに進むとより上りやすいです。
手は洗いにくい
お手洗いなどで手を洗う際、気を付けないと袖が濡れてしまうため少し時間がかかりますよね。これも階段と同じで、着物ならではのことです。そして、周りの人はそこまで気にしていません。用を足した後なのですからなおさらです。
手を洗う時は、袖を脇で挟む、または袖の角の部分を帯に差し込むと手首までしっかり洗うことが出来ます。
結び
どんなことでも始めは不安です。そんな時に経験者から心配し過ぎと言われても、ご自身の不安は消えないものです。しかし、今回挙げた問題は自信のなさを誘引としたものばかり。心配を消す一番の方法は、たくさん着て、経験を積むことだと思っています。
この記事がそんな最初の一歩のお手伝いができれば幸いです。皆さんが素敵な着物の時間を過ごせますように。
終わり