「着物を着たい。でも街中で浮きたくはない」
着物が気になっているものの、ここで立ち止まり、あきらめる方も多いのではないでしょうか。わたしも常々、『悪目立ちしない』ように服を着ているので、気持ちはよく分かります…。
しかし今では着物生活年6目。自転車に乗ってスーパーに行きますし、英会話や映画館も着物で行きます(通勤時は洋服です。制服に着替えるロッカールームの床が汚いので、着脱で着物を汚したくないから…)。
↑とある冬の日の、英会話に行く格好
そんな暮らしをしていると、外出先で視線を感ることも数知れず。そこで感じたことも色々あります。今日はその中から、『目立たない着物』について考えたことを、皆さんと情報共有していこうと思います。
いかに人目をひかない着姿にするか。ひとことでまとめると、普通に着ること。これにつきます。
「そんだけか~い!」
……詳しく説明いたしますね。
石を投げれば洋服姿の人にあたる現代社会では、着物は珍しく、目立つでしょう。しかし、それ以上に目立つ装いがあります。
それは、普通じゃない要素を取り入れている格好。全身ヨウジヤマモトの真っ黒でワイドシルエットな装いや、ピンクに染めた髪の毛、足袋ブーツなどなど、和洋問わず奇抜なファッションをしている方のほうが、普通に着物を着ている私より、よっぽど目立ちます。
着物は珍しいかもしれません。しかし、普通な着こなしでは人々の関心を強くひくことは難しいのです。お友達やご家族に、「この前、ピンクの髪の人とすれ違ったよ~」と言うことはあっても、「着物の人いたよ」なんてわざわざ話したりはしません。着物だからと身構えず、普通に着てもらえばいいのです。
とは言ってみたものの、着物が珍しい現代社会で「普通に着なよ」と突き放すだけでは不親切でしょう。そこで、私の考える街になじむ普通の着物姿について書いていこうと思います。しばしお付き合いください。
本記事の結論は、目次でおおかたバレているかと思いますが、改めて目立たない着物コーデのポイントをお伝えしますと、
- ネイビーで無地調の着物を選ぶこと
- 長着と羽織が同生地になっているアンサンブル{対(つい)、セットアップのこと}を選ぶこと
- 小物も同系色でまとめること
- 着流しで着ること
となります。理由については、私の着物生活から得られた経験、学びを交えて、これからご説明していきましょう。
※着物を着るのに必要なもの、着物の始め方から知りたいという方は、男着物の始め方をご覧ください。
※広告が入っています。読みづらい箇所があるかもしれません・・・。
色は濃紺一択
まずは着物を買わなくちゃいけませんね。そして、これだけで9割9分やることはおしまいです。頑張っていきましょう
最初は古着から手を出すのが個人的におすすめです。予算1万円でも選択肢の幅が広いのが特徴で、ユニクロのような価格設定の中から選ぶことが出来るのが魅力的。
さらに最近では、リーズナブルで良心的な着物屋さんも増えてきました(ここで挙げる着物屋とは、いわゆるセレクトショップのことを指します)。古着に抵抗のある方は、こちらから遊びに行ってもいいかもしれません。実店舗では、店員さんからアドバイスをもらえるのも大きな利点です。今回は、実店舗だけでなくオンラインショップも展開しているおすすめのお店をいくつか皆さんに共有しておきます。
伝統技法を駆使したものや奇抜なデザイン、人気ファッションブランドとのコラボ品など、無数の選択肢があって楽しく悩んでしまうかもしれません。しかし我々が最初に手に取るべきは、ネイビーの着物です。繰り返します。濃紺の着物を選んでください。※ターコイズブルーや綺麗な瑠璃色ではありませんのでご注意を。
↑おすすめは左の濃紺。右も綺麗な青で好きなのですが、今回の趣旨には少し合わないかも…。
濃紺をおすすめする理由は以下の通り。
- 誰でも似合う。
- どこでも手に入る。
- 洋服のベーシックカラー。
- コーディネートしやすい。
われわれ日本人の肌に紺色がよく合うのは周知の事実。それは昔も同じだったようで、先ほどご紹介したお店だけでなく、古着屋さんにも必ず置いてある色です。黒やグレーなどの使いやすく現代人に人気の色は、特に古着で探すのは苦労するので、初めての方にはおすすめしません。
また、西洋ではグレーとネイビーが紳士の基本色とされており(豆知識:結婚式に参列するならスーツは黒じゃなくこの2色が適しているそうです)、街中で大勢が着ています。たとえ珍しい着物姿でも、濃紺なら周囲に溶け込み、目立ちません。
ネイビーのコーディネートのしやすさは、説明するまでもありませんね。「おれは緑が好きなんじゃー!」と買ってしまうと羽織や帯選びで苦労することになりますし、「全身黒にすれば目立たないでしょ!」とやってしまうと、結構強めな印象になり浮きます…(べ、別に実体験ってわけじゃないんだからねっ///)。
そして、ワンカラーコーデも併せておすすめいたします。着物だけではなく、羽織や帯も同系色でまとめることで、コーデが洗練され浮きづらくなります。
しかしこれは、着物が目立たないというよりは『ダサさで目立つこと』を避ける意味合いが強く、素材選びなどによっては無表情でのっぺりした着姿になるリスクもあるので、ファッションが苦手な方にはおすすめしません。もうすでに着物をお持ちで、のっぺり着物に悩んでいる方は、艶のあるものとないものを組み合わせること、色の濃淡や色調をずらして組み合わせること、を意識してみてください。先ほどの写真でもそうやって組み合わせていますが、立体感が出るのでおすすめです。
※もっと詳しく着物のコーディネートについて知りたいという方は、こちらの記事がおすすめです。「文章だけじゃ分かりにくい」という方は、藍色のtwitterが参考になるかもしれません。コーディネートを全身、首元、帯周り、足元など様々な角度から撮って投稿している着物男子はレアですよ(自分で言っちゃあ、だめですよね・・・。)
コーディネートに自信のない方は、アンサンブル・対(つい)と呼ばれる、着物と羽織が同じ生地で、セット売りされているものがおすすめです。スーツ着とけばとりあえず格好いいの法則と一緒で、簡単にかっこよくなります。古着屋には必ずと言っていいほど紺のアンサンブルが陳列されていますので、ご自身のサイズに合うものを探してみてください(サイズ選びに不安のある方は、袖丈の基準、身丈の基準の2つの記事でサイズ選びの解説をしていますので、よければご覧ください)。

無地に勝る柄はなし
「わかったよ!濃紺の着物を買ってくればいいんだねー!!」と、勇み足でこんな感じのものを買ってはいけませんよ。



自然体な着流し
このブログを読んで濃紺かつ無地の着物を手に入れたあなたは、もう何も恐れることはありません。悪目立ちすることのない『普通な着物姿』で、堂々とお出掛けしてきてください!
しかし、コーディネートでご注意いただきたいことがもうひとつだけあります。
「もういい加減、好きにさせてやー!!」
なんて声も聞こえますが、私は皆さんに意地悪がしたいわけではないのです。
『袴は着ないようにしよう』。最後にお伝えしたいことは、たったこれだけです。
「袴、かっこええやないか!なにがあかんねん!!」
もちろん袴姿は素敵です。しかし、着物を着ているだけで「結婚式なんですか?」、「気品を感じる」、「着物を着られるなんてすごい!」と仰々しくみられる昨今では、袴まで装備すると、やや過剰な雰囲気になります。
あくまで『街中で浮かない普通の着姿』をゴールにするのであれば、着流しというスタイルが、気負わず自然体な着姿として街になじむのではないでしょうか。
↑サングラスやブーツには目をつぶってください…。
結び
これから着物を楽しもうと思ってらっしゃる方に私からお伝えしたいことはたった2つ。
- 思う存分楽しんでいってください!
- おすすめは紺の無地着物ですよ~。
これだけです。
着物で楽しい時間を過ごしていただけたなら、わたしの目的は達成です。悪目立ちすることなく、街中に溶け込んでお出掛けできることを祈っております。
しかし、そもそも私は人目につくことは悪いことばかりではないと感じています。高級車や美女を目で追ってしまうように、あなたも見られているのかもしれません。この記事を読んでくれるような勉強家で気配りのできるあなたなら、素敵な着物姿になるに違いありません。
ぜひ一緒に、着物のある暮らしを楽しんでいきましょう~。
おわり