季節感とのちょうどいい距離感

着物

 ※広告が入っています。読みづらい箇所があるかもしれません。どうかご容赦ください・・・。

 着物を着ていて、自分の中で変化したことがあります。以前より「季節」に敏感になりました。

 寒くなってきたら、「ニットを着よう」「コートを買おう」って思ってました。頬を撫でる風が冷たくなっていく感覚、日に日に日暮れが早くなっていく寂しさ。天気予報の数値でもはっきりと分かりますし、春夏秋冬をファッションで楽しんでいる自負はありました。

 でも着物を着始めてから、もっとささやかなことで季節の移ろいを感じるようになりました。「あ、山茶花が咲いてる。冬が始まるんだな」「月が冷たいほど綺麗に見える。空気が澄んできた」「空模様も木々もくすみがちだから、鮮やかな服を着よう」なんて、昔は考えもしませんでした。


 着物には本当に様々な模様や柄がありまして、自然を表したものも多いのです。また、24節季や72候のような「暦」というのも、着物を着始めると耳にするようになります。私は信じていませんが、「その花の時期にその花柄を着るのは野暮」という言説もあります。お花見の時期に桜柄はださい、みたいなことを言いようです。きっと、自身が身に着ける衣服自体が「季節」という要素を洋服以上に含んでいるから、自然と気になるようになってくるのでしょう。

 例えば11月の中頃には、72候では「山茶始開」という暦が回ってきます。これは立冬の最初の頃で、山茶花が咲き始める時期でもあります。そうすると、「山茶花がそろそろ見られるかな」「咲いてるからもう冬だな。どうりで寒いわけだ」「山茶花みたいな色合いの帯を締めようかな」となるのです。これ、着物好きなら分かってくれるはず。以前は、冬、めっちゃ寒い冬、まだいける冬、と自分を中心に回っていた季節が、四季折々の花や天候、はたまた土や虫にまで目を向け、耳が痛くなるほどの寒さも「旬のもの」のように楽しめるようになりました。自分の世界が拡張されたようでもあります。

衿元に山茶花の柄をワンポイントに。分かりづらさがポイントです。

 季節感を取りいれる上でよく参考にするのはこれ。せわしない日々の中でちょっと立ち止まって一休み、そんな気分にもさせてくれる良書です。


 


 しかし、外界に意識を向けすぎて自身の感情を疎かにしてしまうこともあります。先ほどの「野暮な話」がいい例でしょう。または、綺麗なパステルカラーを着たくても「冬に春らしい色はちょっと」なんてことも。皆さん経験ありますよね。

 四季や暦、冬が纏う冷たい灰色の空気。それらは決して私たちの感情や生活を縛る標識ではありません。その時々を慈しむための節目であり目印、ささやかなとっかかりです。楽しみたいときに箱から出して、じっくり楽しめたら仕舞えばいい。ずっと外界と接続しっぱなしじゃ疲れちゃいます。皆さんで今年も季節を目一杯楽しんじゃいましょう。

 明日は寒そうだから珈琲でも淹れてみようかな。おいしそうな湯気がゆっくり立ち上る、そんなことを想像しながら。

 

 終わり

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