「だって、好みのものがひとつもなかったんです」
わたしはこれまで、何着も着物を誂えてきました。つまり、自分専用に着物のサイズを指定して仕立ててもらってきました。これは、わたしがお金持ちで着道楽なぼんぼんだということではありません。好きな衣服にもっとお金が使えたらと、いつも銀行口座とにらめっこしている庶民が私です。
そんな私が、どうやって何着も着物を誂えることができたのか。答えは、『着物屋さんで買っていないから』です。
より具体的にいうと、生地を安く買って、それで着物を誂えたということですね。
今回は、着物を作るための布地をどこで探して、どう選ぶべきかという点について、着物生活6年目のミニマリストという異色の経験、視点から皆さんと情報共有していきます。おすすめのお店などもご紹介していきますので、お時間の許す限りお付き合いください。
結論を先に述べますと、
- 着物用の布を古着屋で探す
- 洋服用の布屋にも着物に適した生地がある
- 必要な布の分量は和裁士に相談する
となります。理由や注意点、経験談はこれから述べていくので、一緒に見ていきましょう。
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どこにも『欲しいもの』がなかった
「着物を何着も誂えるなんて、さぞたくさん着物を持っているんだろう」と思われるかもしれません。しかし、わたしはミニマリストです。ファッションが好きなものですから最小限とは言えませんが、衣服の数は一般的なそれを下回っています。では、なぜ着物を何着もオーダーメイドする必要があったのか。理由は簡単です。着たい着物がどこにもなかったからです。
わたしは着物で暮らしています。買い物や映画館も、もちろん着物です。もともとシンプルで無地な衣服が好きだったのですが、着物で街中に溶け込んだ着こなしをしようと思うと、シックなものが必要になってきます。だって、着物というだけで他の人より目立つのですから、古典的な柄や鮮やかな色の着物を着たら、ねぇ・・・。
洋服と同じように着物をお店から買うと高くつくので、普段は古着屋さんで買い物をすることが多いのですが、無地のものが全然ないんです。伝統技法を駆使した古典的な柄が多く、まれに無地で素敵なものがあっても『お召し』という高級品で、値段が100倍することもよくあります・・・。
「古着屋には昔の着物しかない。私の欲しい着物はどこ?」となった次に、現代の着物屋さんなら『今の感性』に合うものがあるんじゃないか、と考え色々見て回りもしました。しかし、こちらも趣向を凝らした色・柄を推していたり伝統的な技法の品を陳列していることがほとんどで、数少ない無地ものは好みの色味や質感じゃない。素敵な生地の着物を取り扱っている大好きなお店もいくつかあるのですが、そちらは値段が素敵じゃないし、微妙に欲しい色と調子が違う・・・。
どうやらファッション好きなミニマリストの趣味はかなり偏向しているらしい、と悟った私は、他の方法を模索しました。そこでたどり着いたのが、「好みの着物がないなら自分で作ればいいじゃない」です。
布なら『可能性』は無限大
着物を作ると言っても、自分で縫うわけではありません。好きな布地さえ見つければ、あとは和裁士さんに頼んで、ささっと着物にしてもらうというだけです。和裁士さんに依頼する際のやりとりなど、具体的な方法は次回に回すとして、まずは布の探し方、見つけ方からご説明いたしましょう。
そもそも、なんでわざわざ自分で布を探さなきゃいけないのか。理由はふたつあります。好みと値段です。単純でしょ?
先ほど、私は欲しい着物がぜんぜんなかったと言いました。それはそうです。古着屋には昔の感性で作られたものしか置いていないし、着物屋さんもショップスタッフのセレクトで品ぞろえが変わる以上、その店ひいてはスタッフ個人個人と趣味が合わなければ、一生好みのものが陳列されることはありません。商業施設ひとつに入ればどこかに好きな洋服が置いてある現代社会ですが、自分の好みの『着物』は見つからないことが多いのです。しかし、『布地』だけで見れば、色、柄、素材、生地の表情etc、すべてが好みなものを見つけることが可能なのです。だって、まだ布なのですから!
「この生地感でネイビーがあれば欲しかったな・・・」
「これで装飾がなかったら、ロゴがついてなかったら・・・」
なんて経験、みなさんありませんか?
また、自分で布を買って仕立ててもらった方が安いことが多いです。もともと安い木綿などの着物は別ですが、お店に陳列されているものは高品質だったり工芸品だったりと値が張るものが多く、反物(生地)を店で取り扱う以上、お店の儲け分(家賃、人件費など)が上乗せされているのもあって余計高いのです。さらに、その反物を仕立てるために着物屋を通して和裁士さんに依頼するので、仕立て代もちょっと割高になりますよね。
「自分で布を探すなんて大変。店にある中から選ぶ方が簡単」
そう思う方もいらっしゃるでしょう。もし信頼できる着物屋さんをすでに見つけられているなら、わざわざ自分でやらなくても大丈夫です。そんなあなたは超ラッキーです(何店舗かで嫌な接客をされた筆者の感想です・・・)。
でもですね、古着屋で反物を掘り出したりネットサーフィンするのは楽しいです。和裁士さんと直接やり取りできるということも、自分の細かな好みを直に伝えられますし、知らなかった選択肢・自分で気づかなかったニーズを和裁士さんに教えてもらえてお得です。なので私は、布を自分で探し出すという遊びを、みなさんにも試していただきたいのです。
そろそろ、布を探しに行きたくなってきた皆さんのために、どんなところを探せばいいのかお伝えしていきましょう。
※必要な布の量については、事前に和裁士さんにコンタクトをとって聞いておくのがおすすめ。無駄に多く買って、布を余らせることを防げますし、着物に向いていない生地を買ってしまう事故も予防できるからです。
古着屋は宝の山
着物用の生地を見つけたいなら、やっぱり古着屋で着物用の反物を探すのが一番簡単です。大島紬や友禅など、着物屋で買おうとすると何十万円もするものが1000円で売っていることもあります。また、現代の着物屋では取り扱っていないレアな生地も掘り出せるかもしれませんよ。
もし欲しいものが布の状態で売っていなくても大丈夫。気に入ったけどサイズが合わない着物でも、和裁士さんに渡せば反物と同様に自分のサイズの着物に仕立ててもらえます。
まずは、近所に古着屋がないか探してみましょう。また、東京・京都・大阪などで定期的にやっている骨董市にはたくさんの古着が集まるので、観光がてら見てみてもいいかもしれませんね。
洋裁のお店は布の海
古着に抵抗がある方や、よりモダンなもの、洋服感覚で着物を着たい方は、洋服地の生地を探すのがおすすめです。洋裁、手芸専門店などを見れば、リネンやコットン、ウール、カシミヤなど多種多様な生地を㎝単位で取り扱っています。圧倒的な品数の多さは、さすが資本主義社会といったところ。もし着物が現代まで市民権を保持できていたらと思うと少し寂しい・・・。
そんなわたしのおすすめは大塚屋さんです。品数の多さは天下一品。
また、名古屋にお住まいの方は布伝説というお店にぜひ一度行ってみてください。倉庫のような店舗に山と積まれた布たちは圧巻で、普通にイタリア産の高級ウールがホコリを被って安売りされていたりします。
どちらもオンラインショップで買い物できますので、まずチェックしてみてください。
大塚屋ホームページ
むすび
好きな生地で着物を作る~布選び編~、いかがだったでしょうか?
みなさんの着物で過ごす時間に少しでも貢献できたなら、わたしの目的は達成です。やったーと喜びつつ、陰ながら応援しております。一緒に着物生活を満喫していきましょう。
続きは、好きな生地で着物を作る~和裁士へ依頼編~にて。